6地域における断熱性能と冷暖房費について
皆さんは高断熱・高気密住宅に何を求めますか?
自分は快適性・健康・冷暖房費・耐久性どれを取っても必須だと思っています。
今回は「生涯コストのおいて本当に高断熱化は優位性があるのか?」を考えます。
断熱に関するマニアックな動画やブログはあるものの、肝心の生涯コストを考える上で
必須となる、冷暖房費から見た高断熱化メリット を語っているものは少ない。
もっと色んな議論があってもいいような気がします。
※断熱に関わる初期費用+冷暖房費が、冷暖房費削減により30年でペイ出来るかを
考えました。衣類や寝具、健康に関する費用は考慮していません。
<まずは結論>
HEAT20 G2レベルであればかなりの確率でコストメリットがありそう。
ただし断熱性を上げれば上げるほど、冷暖房費の削減効率は悪くなる。
(決して高断熱を否定する結果ではありません。詳細は下記に記載します)
<条件>
家庭用エアコン1台による全館空調。
冬の暖房費の比較を見れば優劣が付けられるので、算出は冬の1か月分とします。
また、計算式は松尾先生の著書である「ホントは安いエコハウス」から引用。
Q値:1.0~2.0
C値:0.5
延べ床面積:108.9mm²(33坪)
エアコンCOP:3
設定温度:22℃
外気温:7.6℃(私が住む地域の12~3月の平均気温)
電気料金:28円/kWh
<結果>
・Q値 × 暖房費
冷暖房費の計算では良くQ値が使用されます(実際のコストと合ってくる)。
また、基本的にはQ値と暖房費は比例関係にあります。
例えばQ値=2.0の時の暖房費が21,570円。Q値=1.0の時の暖房費が11,088円と
Q値を2倍にすると、暖房費はほぼ2倍になります。
・Ua値 × 暖房費
では、国の基準など多くの場面で使われるUa値で見るとどうでしょうか。
Q値をUa値に簡易的な計算式で換算し、先ほどの暖房費との関係をグラフ化しました。
Ua値=0.87(次世代省エネ基準)の時の暖房費は 28,963円
Ua値=0.435(↑の半分) の時の暖房費は 16,666円(-12,297円)
Ua値=0.2175(↑の更に半分) の時の暖房費は 11,088円(-5,588円)
と、なりました。
<まとめ>
Ua値=0.87から0.435(半分)にすると12,297円もの暖房費削減できるのに対し、
Ua値=0.435から0.2175(半分)にしても5,588円の暖房費削減にしかならない。
断熱性能(断熱材の種類と厚み)を上げれば上げるほど、冷暖房費の削減効果は低くな
っていると言えます。ただし、Ua値=0.87から0.435にすることで、暖房費が42.5%減とそこそこ高い効果が見込めそうな事が分かりました。この計算に含まれない
日射取得、家電や人による発熱、換気による熱損失、エアコンの能力など総合して
考えると、もっと高い効果があると言えそうです。
参考程度ですが、Ua値=0.87から0.435にすることのコスト効果を以下概算しました。
暖房費が12000円削減できると、30年間での削減効果(暖房のみ)は、
12000円/月 × 5か月(冬) × 30年 = 180万円 となる。
Ua=0.87の時の断熱関係費用が+100万円と仮置きされることが多いので、
それを織込むと、Ua=0.435にすることでの追加費用+100万円(2倍)を大きく超える。
<感想>
やはり6地域においては、HEAT20 G2レベル付近を狙うのが最も効率がいいのかもしれないと感じました。おそらく間欠運転でも元は取れそうですが、エアコンの設置台数によっては微妙な所かもしれません。